東京高等裁判所 昭和37年(ネ)35号 判決
控訴人は、否認権の行使により、代物弁済行為時におけるその物の価格を基準として原状回復がなさるべきであり、又本件は商人間に行われた代物弁済であるから、商法第五百六十六条の適用があり、被控訴人矢作光以からは前記商品が不良品であるとの通知がないから、同被控訴人は控訴人に対し代物弁済時における前記商品の価格たる金四万八千六百四十四円の支払を求める旨主張するが、否認権の行使が破産財団を原状に回復させるものであることは破産法第七十七条第一項の明定するところであり、代物弁済が否認された場合、その目的物が現存するときは、代物弁済を受けた者はその目的物を返還すれば足りるのであるから、若しもその目的物の滅失その他の理由により原状に回復することが不能となつた場合には、否認権行使の時におけるその目的物の価格を返還することを要し、かつこれをもつて足りるものと解するのが相当であり、このように解するときは、代物弁済行為時におけるその目的物の瑕疵につき商法第五百二十六条の適用があるか否かについては論ずる必要がない。
(谷本 堀田 野本)